市川祐子氏による「Non-nativeでもできる!英語でIR」ウェビナー

【 2023年11月27日開催 みんせつIRセミナー Q&A 】

英語の発音の正しさは、どう確認(練習)したのでしょうか?凄い早口な英語の方がいて聞き取れないときがありますが、そういう方に対してどう対応していたのでしょうか?

セミナー中でも申し上げましたが、私の場合は楽天時代の同僚が経営する会社の発音矯正トレーニングが良かったです。関連する書籍(テキスト)は『英語耳』でした。他にも同様のサービスを提供している会社もあります。また1on1で聞き取れない時は、聞き返すことができます。日本語でも意図がわからず聞き返すことはありますし、恥ずかしがらずに聞くと良いと思います。

最後の方に参考になったとおっしゃっていた本の題名と著者を教えてください。

『敬語の英語』デイビット・セイン、佐藤淳子 著です。

情報を得るために使用されているメディアサイト・ニュースサイトを教えてください。

Bloombergがあればいいですが、高額なので、例えば無料の場合、バフェットコードが使えます。企業の横並び・比較をするのには良いですね。ただ、市場の情報を取得するのは、日経だけですと、どうしても偏ってしまうので、海外のニュースサイト、Financial TimesとかThe Wall Street Journalなども使えると思います。あとは証券会社からニュースレターなどをもらえるのであれば、そこから情報を得るのが一番良いですね。例えば、日本のインターネットをカバーしているアナリストがときどき、米国のインターネット事情のレポートをくれることもあるので、そういったレポートを見ることも結構重要だと思います。

現在英語は初心者レベルなのですが、IR やファイナンスに特化して英語を勉強できるツールがあればぜひご教示いただきたいです。

自社か競合他社の決算説明会資料の英語版や、海外企業の決算の動画や音声を聴くのがもっとも良いと思います。私の場合は、英語の簿記のテキストで学びました。日本の簿記の一定程度を学んだ上で、上司から自身が米国ビジネススクールで使ったAccountingのテキストを貸してもらいました。

投資家との初回面談に臨むプレゼンテーション資料について、ページ数などの分量の目安はありますでしょうか?ページ数が多いと情報量が多すぎると言われるケースもあり、投資家の知識、理解度も様々である中、どの程度のボリュームが最適か。スタート期、拡充期、成熟期別に目安があれば教えていただきたいです。

初回投資家向けのプレゼンテーション資料の枚数は、スタート期は20枚程度、拡充期は40~50枚程度、成熟期はサイバーエージェント並みに100枚近くあっても良いと思います(企業規模にもよりますので目安としてください)。枚数が増えてもグラフを多用し文字数を絞ることで、作る側も読む側も負担が少なくなると思います。文字量もサイバーエージェント(https://www.cyberagent.co.jp/en/ir/library/ataglance/)を参考にしてみてください。

海外投資家とのMTGの議事録作成や振り返りをどのようにされていましたか。記録の残し方で工夫された点や、もし議事録の作成ツールなどを利用されていたら教えていただきたいです。

紆余曲折した後、最終的に落ち着いた議事録フォーマットは、気になった質問と回答、経営陣に聞かせたいコメントなど数行の文章と、質問についてはセグメントなど大項目毎に費やした時間の分布(例 EC30%、金融15%、連結PL25%、8~10項目くらい)のみを記録していました。当初は質問全部を記録していましたがとても追いつきませんでした。またFAQをしっかり作っていれば、FAQに含まれる回答はその通り答えるので、QとAを全部記録することもなくなると思います。

使用した英単語の妥当性、業界で慣習的に使用される単語の確認には、ネイティブの介在や専門翻訳会社の介在が必要なものでしょうか?自分や社内のスキルでは難しいケースへの対応を知りたいです。

社内に金融の英語がわかる人がいないのであれば、機械翻訳会社の中でも最終的に翻訳者のサポートを得られるサービスを選んだ方がいいと思います。そうなると、量によっては機械翻訳でもそれほど安くはないので、最初からプロの金融翻訳者にすべてを依頼する方が効率的と考え、従来の翻訳業者に委託する上場企業もまだまだ多いと思います。このあたりは予算と時間効率と翻訳したい量との兼ね合いになるかと思いますのでよくご検討ください。

例えば、日本語と英語の資料で表現や内容が異なっていたりしても良いのでしょうか。同じものをそのまま訳した方が良いのかなと思い悩んでいます。

「意訳」の範囲であれば多少異なっても良いと思います。また欧米にはない商習慣を補足する文章が英語に追加されても良いと思います。そうでなければ、日本語の表現自体が今一つ適切でないこともあるので、その場合日本語を修正することもご検討ください。

IRの一般論かもしれませんが、証券会社とはどのような接点をもっていましたか?

証券会社は、いわゆる主幹事証券のほか、M&Aなどディール時に参画いただいた証券会社とは緊密に関係を持ち、役員の投資家訪問でアレンジを依頼していました。また良いアナリストがいる証券会社にはカンファレンスに出席するなど別の形を築いていました。会社規模によってはお付き合いが少ない場合があるかと思いますが、まずは主幹事証券とは関係をキープした方が色々助けてくれると思います。

プレゼン資料を翻訳業者に依頼すると4-5日かかります。 機械翻訳で一旦公表した後で、翻訳業者の翻訳に差し替えるのが良いのでしょうか。 正確でない英語を公表することが気になっています。

東証の英文開示実践ガイドブックP9 (https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/disclosure-gate/handbook/nlsgeu000006mkr2-att/nlsgeu000006nbam.pdf)には、機械翻訳を使った場合にはその旨Disclaimerを付す事例を紹介しています。決算短信の財務諸表やサマリーページなど定型的なものはこちらで足りると思います。プレゼン資料のように一般的に定性的な文章が多い場合には、機械翻訳は正確でないことも多いので、全体をそのまま開示するのはあまりお薦めしません。しかし、速報性を重視するのであれば、例えば日本語発表直後は、主に数値部分(グラフや表)を抜粋したものを機械翻訳で開示し、その後全体を翻訳業者の翻訳に差し替えることも考えられます。実際にやったことはないので、東証とも相談してみてください。その場合、当初版を[Excerpt version] 差し替え時に[Delayed][Full version]としてタイトル冒頭に付けるなどの工夫は必要だと思います。

第3段階にいるときに1名でIR担当している場合、どこから翻訳に手を付けたら良いでしょうか?

第3段階にいる=時価総額が相当に大きいという意味であれば、やはり決算短信と決算説明会資料の翻訳から手掛けるのが良いと思います。全部のページを翻訳しチェックする体制がない場合には、最低限、海外投資家に知ってほしい部分を抜粋し[Excerpt version]をタイトルに付け、日本語版が正であるDisclaimerも含めると良いでしょう。(東証の英文開示実践ハンドブックP9 https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/disclosure-gate/handbook/nlsgeu000006mkr2-att/nlsgeu000006nbam.pdf) 第3段階にある=既にほとんどのIR資料を英訳していてIRが1名である場合には、そもそも英訳する分量を減らすために、英訳するIR資料を減らすのが良いと思います。短信と説明会資料に絞り、説明会資料も抜粋版のみを英訳する。またはそもそも和英併記しながら作成し、枚数を相当に絞る。有報や総会招集通知など、継続性の問題で英文を開示しなければいけない場合、多少高くても金融翻訳に長けた会社(例えば宝印刷など印刷会社や通訳会社といったその道のプロ)に全部委託し、チェックがほぼ不要な状況にすることなどが挙げられます。