もう悩まない、機関投資家が望む決算説明会の開催方式について

【 2023年9月26日開催 みんせつIRセミナー Q&A 】

決算説明会は年間何回くらい行うのが望ましいでしょうか。 (参加者が少なく固定化しており決算説明会開催の必要性に疑問を持っている役員もおります)

投資家の限られた時間を、全ての上場企業で奪い合っていると考えてください。投資家は、外部環境の変化に応じて、日常的に、組み入れ銘柄のウェイトを変えています。あまり1on1ミーティングを行わないのであれば、せめて四半期に一度でも、投資家の時間を奪う機会を作ってください。企業側にとっても、決算説明会は、一度に多数の投資家と対話できる効率的な場だと思います。 なお、前四半期と、説明内容がほぼ同じであっても開催してください。企業側が変わらなくても相手が変わっているケースがあります。外部環境の変化などにより投資家の方針(リスク許容度、求めるリターンなど)が変わっていることがありますので、「前四半期と変わらず、主要な指標が堅調である」ことを説明する時間を作ってください。 また、決算短信の内容だけでは、投資家が理解するための十分な時間を確保するのは難しいとお考えください。

オンラインの利便性は理解しているものの、対面で想いを伝えたい!というマネジメント層の意見も多いです。  機関投資家からの意見はこうでした、だけではLIVE配信への切り替えとして弱いと感じています。どのように説得すれば良いでしょうか?

マネジメント層には、決算説明会より「スモールミーティングでより深く語ってもらう」という機会を設けるのはいかがでしょうか。 最近、機関投資家から、証券会社主催ではなく、企業主催のスモールミーティングの開催を増やして欲しい、という声を耳にします。「証券会社主催だと、声をかけられる機関投資家が、その証券会社の顧客かどうかの判断となり、株主であっても声がかからない」という不満があるそうです。 マネージメント層のスモールミーティングは、機関投資家とのエンゲージメントという意味でも有用と思います。 なお、説明会のオンライン化が始まって3年経過し、投資家も企業もオンライン説明会に慣れているため、対面とオンラインの(伝わる情熱の)差がほとんど解消されてきていると感じます。

ご説明では、オンラインが選好されており、会場のみは好ましくないというのは明らかでしたが、オンラインオンリーがハイブリッドより 好ましいと主張するほどの強い機関投資家意見は見受けられなく感じました。 本説明会の趣旨にあるようなハイブリッドよりもオンラインオンリーを主張できる強い意見はありませんでしょうか?

ハイブリッドで開催しても、オンラインでの参加人数が多く、会場での参加人数が少ないというケースが多くあります。オンライン参加者が多いにも関わらず、オンライン参加者は雑音などで音声が聞き取りづらいなど、参加人数が多い方が不利益を被ってしまいます。参加者人数の多いオンライン開催を優先すべきと考えます。更に、説明会終了後、会場に来られた方は、その後役員とのやり取りをされる事があり、オンライン参加者はその内容が分からない事に不満を持つ投資家がいらっしゃいます。また、フェアディスクロージャーの観点からも会場のみの開催は望ましい姿とは思えない、という機関投資家からの意見もあります。

回答頂いた機関投資家の方々はどのような顔ぶれでしたでしょうか。 固有名詞は当然非公表とは思いますが、大手とか、生保系、長期投資家といった属性、特徴などを伺えればと思います。

国内ロングオンリーを中心に回答していただいており、約60%国内ロングオンリー、約20%ヘッジファンド、約20%海外ロングオンリーとなっております。

現在、株式の出来高や流動性が低く、個人投資家の保有比率が多い状態です。そのような状況でも機関投資家向けのIR活動を注力すべきでしょうか?

個人投資家だけにフォーカスしていると、出来高・流動性を上げることも、株価を上げることも難しいと思います。やはり、機関投資家向けにもIR活動を開始し、認知してもらうことで、出来高を増やす必要があると考えます。

オンライン希望の投資家要望で、説明会詳細を公開とありましたが、これは具体的にどのような情報を指しているのでしょうか。

説明会日時と参加者用のオンラインURL(ZoomのURLなど)の両方の情報がみんせつサイトなどで確認できることを希望されています。

説明会での質疑応答ですが、テキストと音声ではどちらが望ましいでしょうか。

質問の意味を確認しやすい、投資家に追加質問で補足確認をしてもらえる、という意味では音声の方が優れているかと思います。また、ライブ感を大切にする投資家からは、企業からの話を聞き続けている感覚になるテキスト受付より、音声質疑のほうが好まれる傾向にあります。 一方、テキストでの受付は、事前質問なども含め、読み上げる順番を工夫することで、企業が伝えたい内容を順序立てて説明したうえで質問に回答することが可能です。 今回のセミナーで行ったように両方を用いる方法を採用する企業もいらっしゃいます。

同業他社さんと連携しているということでしょうか?

ご認識の通りです。半導体業界や医薬品業界などでは、決算説明会の日時調整を同業他社(時価総額が大きい企業間で)で連携しているケースもございます。

同業他社と説明会が重ならないようにする・・・というのは、どのようにしているのでしょうか?自社でLIVE配信しているのであれば、 他社情報を見ながら日程設定が可能かもしれませんが、外部へ委託している場合は、かなり早い段階で日時を確保しておく必要があります。

同業他社間で連絡を取り合い日程調整を行うケースと、みんせつサイトで同業他社の説明会開催日時を確認後、自社の開催日程を決定するというケースを伺ったことがあります。

ハイブリッド開催にしてもほとんどがweb出席となり、会場出席者がいないということになるとかけた労力に見合わない結果であると思います。 ハイブリッド開催で会場出席する機関投資家はどの程度いるのでしょうか。

ご指摘の通りと思います。ハイブリッド開催をしても、会場出席者は全体の1割程度にとどまっており、更に投資家の参加となると更に出席少ない印象です。

アナリスト、機関投資家のお考えはよく分かりましたが、現実的には対面やハイブリッドが増えてきているのでしょうか?増減の傾向が分かれば 教えていただきたいです。(いったん増えたけど、その後は停滞、等)

2022年、2023年を4-6月期で比較しますと、オンラインとハイブリッド開催は増加、会場開催は減少、電話会議と動画配信は横ばいとなっております。

オンライン決算説明会の参加者を増やす方法でアイデアがあれば教えてください。

ピーク時(15時以降、決算締め日から30日・45日目)を避ける、説明会の案内を投資家に送付する、前四半期と比べた変化を示す資料を追加するなどにより、投資家の目に触れ、興味を持ってもらう機会を作ることが大切だと思います。

当社の企業認知度がまだまだ低く、決算説明会には参加者確保のため取引銀行なども招待するため、古くからの慣習として双方が対面で挨拶を 希望されるため、ハイブリッド形式→ライブ配信のみに踏み切るよう役員を説得することが難しそうなのですが、他にもそのような声はありますでしょうか?対策を教えてください。

取引銀行は、対面での挨拶や名刺交換を行う習慣が根付いていますが、本来の決算説明会の趣旨(会社の業績の詳細を説明する、今後の見通しを説明する)とはズレいてしまいます。取引銀行との挨拶は別の場で行うのがよろしいかと考えます。

決算説明会でのQAの重要性について教えて下さい。 投資家リクエストから鑑みても決算説明会を実施することは否定しないが、決算説明の動画を公開するだけでは足りないでしょうか?効率性とFDルールだけに配慮すると、フェアな手段だと思う。
※HPに掲載することで、機関投資家、個人に限らず閲覧できるため 質問する場合、個別で1on1なりIRに問合せすることができるが、説明会で質疑をする意味、意義について教えて下さい。

説明会でQ&Aをする意義ですが、参加者複数で共通の質問をIRの方々にするのを避けるということが1点、投資家からのメリットとしては参加者全体で質問の抜け漏れを防ぐことができる、広く質問することで御社に関する知識を共有することができる(一定程度は市場の誤解を防ぐことができる)という点があります。 説明会ではその場で考え得る大きなポイントに絞って質問をしますが、1on1MTGではその後に獲得した情報や分析内容を元に少し掘り下げた内容や他の投資家とは共有したくない情報を質問します。また、説明会や1on1MTGに限らずですが、ご回答者によって質問する内容を変えます(経営陣には経営に関する質問を、IRチームの方々には数値に関する質問を、など。)

社長が登壇するスモールミーティングを開催するとよいとのことでしたが、その際の一般的な内容と時間配分(プレゼンテーション、質疑応答など)、 参加人数(絞る場合はどの基準で絞るか)、開催時期(決算説明会に近い日程、決算説明会から時間が空いてからなど)を教えてください。 社長が説明会にも登壇する場合、内容や形式が決算説明会と被るのではと思います。

社長のスモールミーティングの場合、所要時間は1時間~1時間半が多いと思います。参加者は会社によって異なり、バイ・セルサイド合同、バイサイドのみ、セルサイドのみのスモールミーティングもあります。参加者のスクリーニングは企業によって大きくことなりますが、株式保有の上位投資家、機関投資家のAUM規模、ある程度の基礎知識が多いバイ・セルサイドのアナリストが対象となっている場合が多いように見受けられます。開催時期は、決算説明会の後、個別取材が一巡した時期からサイレント期間に入る前が多い印象です。 構成は、前半~30分程度で社長によるプレゼンテーション、後半に質疑応答形式が多いようです。直近で私が参加したスモールミーティングの場合、1時間半の構成で、前半30分で社長のこれまでの経歴や成長戦略の説明(プレゼンテーション)があり、後半60分で質疑応答の形式でした。同社は新社長が就任したばかりで、機関投資家との顔合わせと投資家視点の共有という意味合いが強く、質疑応答では決算説明会の質疑応答というよりも、投資家はこういう点をみている、そういう点で社長はどうみているか?という質問が多くありました。ご参考までに、過去のスモールミーティングでは、資料なしで1時間、社長と質疑応答を行うという形式もありました。また、特定のトピックを設定して、質疑応答という形をとりながらもディスカッションを行うというスモールミーティングもありました。後者の場合は、開催企業の事業に詳しい参加者がかなり限定されて招待されていました。

説明会後アンケートを希望されている方は多くいらっしゃるんでしょうか。

ご質問の意図が、投資家が決算後アンケートを望むか?という意味でしたら、アンケートを通じて企業に意見を伝えたい、という投資家は少ないかと思います。 ただ、企業のお役に立てるならできる限り協力する、という投資家の声は一定数伺っております。

ご参考までに、弊社の属する業種では、主要企業のIR担当者が参加する交流会を立ち上げ、情報交換をしております。なお、コロナ期ではありますが、業界のリーダー的立場の企業様がハイブリッドで説明会を開催したところ、会場にいらしたのが2名だけだったことがあり、以降オンライン開催に切り替えられたそうです。コロナ収束後にどうするかはあらためての課題と伺っております。

情報提供をありがとうございます。ハイブリッド開催よりLIVE開催を推進してまいります。

オンラインの場合(当社への関心が少ないというのが原因だと思いますが)質問がないことが多いのですが、会場開催より質問しづらいということはあるのでしょうか?

会場開催よりオンライン開催で質問しにくいということは、特にありません。
決算説明会での質問者の多くは証券アナリストのため、証券アナリストの参加を促す施策を行うことで、質疑応答を活性化させるのはいかがでしょうか。

オンラインの場合において、質問がたくさん出るようにするにはどうしたらいいでしょうか。

証券会社のアナリストへの招待を多くする、質疑応答で質問が出ない場合、最近はこのような質問があったと回答付きでご紹介する。紹介することで、新規質問者の興味を持ってもらえるようにするのはいかがでしょうか。

質問ではないですが、オフピーク開催のメリットを多くお話頂いている中で、できれば業種ごとに説明会のピークやオフピークが分かるスケジュール表などがあると、大変ありがたいです。

みんせつの決算説明会カレンダーで業種ごとのピークやオフピークをご確認いただくことができます。
例えば前年同月の開催状況を業種で絞り込み、本年のピークやオフピークを予想いただくことも可能かと思います。

大手の会社ではオンライン・ハイブリッド・その他、どの開催形式が多いか統計はありますでしょうか。

時価総額3000億以上では、LIVE配信>ハイブリッド開催>電話会議>会場開催>動画配信となり、1兆円以上では、LIVE配信>電話会議>ハイブリッド開催>会場開催>動画配信となります。

CG報告書では、個人、機関、海外それぞれに向けた会社説明の機会に関する項目があります。決算説明会においては、個人向け、機関向けを区分けする意味はあるでしょうか。あるとすれば、どのようなところで差別化を図るべきでしょうか?

個人と機関投資家では事前に保有している情報量や分析内容が異なります。このため、現時点においては、別々に開催する方がよいと考えます。

差別化方法については、機関投資家には足元の決算を前年同期比、前年比の増減要因、通期計画増減要因、セグメントの増減要因を提供し、投資家が分析しやすい内容を提供すると同時に、中計や長期ビジョン(なければ中長期の見通しやイメージ)を説明、それに至る道筋をお示しするとよいと思います。個人投資家を対象にした説明会資料は、会社を知ってもらうという意味に重点が置かれているケースが多く、会社・事業紹介を中心に作成されている場合が多いように見受けられます。

現在ウェビナー形式で配信していますが、説明者の顔が見えたほうが心象よいでしょうか?どれくらいの企業が顔出しで説明会を行っているか感覚でいいので教えていただけますでしょうか。

説明者の顔がみえたほうが参加者からの心象はよいです。機関投資家からは「資料に沿った決算説明部分では必須とまでは言わないが、質疑応答に関しては、説明者の顔を見せてくれたほうが、音声だけでなく視覚情報も認識できるため、より理解しやすくなる」との声を伺います。

アナリスト、機関投資家がオンラインを希望していたとしても、ハイブリッド開催する企業が増えてくると、社内でハイブリッドにすべきではとの声が出てくる可能性があります。別の機会でも良いので、もし分かればハイブリッド開催の増減の傾向を、会社の規模ごとなどで分けて、教えていただけると大変助かります。

2022年と2023年開催された通期決算で比較すると、ハイブリッド開催は全形式の中で、2022年で10%、2023年で15%の割合となっております。
時価総額が1兆円以上の企業で増加したものの、それ以外の会社規模の決算説明会は依然オンライン開催が主流です。

大手や有名な企業でなくてもアナリストに注目されている企業は、IRにどんな特徴や努力があるでしょうか。

自社の成長ストーリーを明確に語れる会社が多いように思います。また、IRの方々が自社の事業だけでなく成長戦略や資本政策について語っていただけると、投資家は御社に関する思考を深めることができると考えます。なお、進捗状況を確認できる月次データの開示なども、投資家が分析する上でとても助かります。

アンケートの母集団は?どのオンライン決算説明会後にアンケートを実施したのでしょうか?

みんせつの会員である機関投資家に向けて、今回のテーマ単独でアンケートを実施しました。

あえて機関投資家だけに向けて開催する意味はありますか?

ご質問の背景を知らないままお答えするのは恐縮ですが、機関投資家に向けて説明会を開催する意味は、もちろん、あります。広く日本株式の売買を行っている機関投資家の皆様に、御社の事業概要や業績状況をご理解いただくことです。

これまでに上場企業から業績が落ち込んでいる時に、説明会やIR活動を行いたくない、とお伺いすることがあります。その時に私がお答えするのは、業績が落ち込んでいるからこそ、回復に向けて業績が転じる局面に入るのはいつか、どのような条件がそろったら業績が回復するのか、あるいは、株価が上昇局面に入るのか、そのための材料となりそうな情報は何か?ということを整理して考えています。したがって、業績が芳しくなくても、IR活動、特に決算説明会はぜひ継続してください。

もう一つ、ご質問を別の読み方をしますと、機関投資家ではなく、個人投資家へのIRや他の業績向上策などにリソースを割くべきではないか?というお考えがあるのではないかと推察いたします。個人投資家への注力は戦略の1つとしてあり得ます。他の業績向上策についても、同様です。

みんせつの決算説明会支援サービスは、元々、上場企業のIRの皆様の手間を省いていただき、その他のIRご担当者様にしかできない業務に時間を割いていただきたい、という思いからサービスを提供しております。宣伝のようになってしまいましたが、ぜひとも説明会運営に関してはみんせつを利用して、省けるものは省いていただき、IRの方々には付加価値の高い業務に集中していただきたいと思います。

開催時のQ&Aの時間では、主にアナリストからのご質問がメインで投資家の方々は質問を殆ど質問をされませんが、何か意図があるのかどうか伺いたいです。

証券会社所属のアナリストから質問はあがるが、機関投資家からの質問が上がらない、これはなぜか?というご質問だと受け取りました。

機関投資家が決算説明会で質問をしない理由ですが、機関投資家は自社保有株式のパフォーマンス向上のため、投資行動を隠すケースが多々みられます。決算説明会など証券会社のアナリストや機関投資家が多く存在する場所で会社名を述べて質問をすると、その機関投資家の活動、つまり、御社に注目している、あるいは質問内容から投資活動を類推される、ということがあります。主にこれを防ぐ目的と考えられます。

対面を希望される投資家(いらっしゃればですが)は、何を目的にされているのか。タイミング(本決算のみ)や、時間(午後は集中するので午前が良いなど)、場所などの意見を伺いたいです。当社はオンライン中心なので、対面実施を検討する材料になればと思い質問しました。

今回のアンケート結果では、対面のみすなわち会場開催のみを希望される投資家はいませんでした。
対面・会場開催を希望される投資家がいれば、というご質問の前提条件から外れますが、会場開催の場合をお答えさせていただきます。対面・会場開催の目的は、前段でもご紹介しましたように、主に経営陣や参加者を含む会場の雰囲気を知りたいという点にあります。開催場所は、丸の内・大手町エリア、日本橋・茅場町エリアがメインとなっています。開催のタイミングは、決算発表後速やかに、というのが原則ですが、より多くの投資家に参加してもらえるよう、説明会開催ピークが過ぎた辺りで開催する場合もあります。以上、ご参考までにお伝えいたします。